「橋本先生がラジオに出演し、統合失調症患者への支援についてお話をされました!」

番組名「薬学の時間」(日本薬剤師会企画)
放送局ラジオNIKKEI
放送日時2018年10月11日放送(放送時間 20:10~20:25)
テーマ統合失調症患者への支援-薬物治療ガイド作成の意図について

ラジオでは、 『統合失調症の薬物治療ガイド―患者さん・ご家族・支援者のために―』を出版した意図について話しました。

『統合失調症の薬物治療ガイド―患者さん・ご家族・支援者のために―』は、薬物治療の効果と副作用の科学的根拠を平易に解説しており、当事者と医療者が知識を共有し、患者さんの好みや価値観に沿った最適な選択を行えるようになることを目指しています。作成にあたっては、当事者、家族、看護師、薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士、研究者、法律家等の支援者が加わり、他にも精神科の関連団体の方にも協力していただきました。平成30年2月に学会のHPで無料公開しており、8月に書籍として発売しています。

精神科領域におけるガイドラインに対しては「臨床現場では役に立たない」などの誤解があります。このような誤解のために、折角作成したガイドラインが正しく使用されなかったり、日本国内でガイドラインが普及していなかったりします。そのため、このような誤解に対してしっかりと説明する取り組みを行っています。

ガイドラインは、複数の治療選択肢の益と害の科学的根拠に基づいて作成されており、これは最新の根拠に基づいてアップデートされていきます。しかし、科学的根拠はあくまでも「確率論的な情報」や「平均値」であり、個々の患者さんの状態を完全に予想するものではありません。したがって、個別の事情を考慮して使うものだということを知っていただく必要があります。

医療における最近の考え方として、Shared decision making:SDM(共同意思決定)があります。SDMは、患者さんと治療者が治療に関する情報を双方に共有し話し合って、患者さんの好みや価値観に沿った最適な選択を共におこなうというものです。「平均値」として推奨されているガイドラインの情報は、SDMのためにお互いに共有されます。

元々、薬物治療のガイドラインとして、日本神経精神薬理学会の「統合失調症薬物治療ガイドライン」という専門家向けに作成されたものがありました。しかし、専門家向けであるため、内容は難解です。そこで、当事者やご家族、支援者の方々が読めるように、分かりやすいものとして『統合失調症の薬物治療ガイド―患者さん・ご家族・支援者のために―』を作成しました。

診療ガイドラインは、先述したSDMという当事者と医療者の意思決定を支援するもので、効果と副作用の両方を勘案して作成されています。より良い医療を実現するためには、当事者と医療者が共に同じような知識をもつことが大事です。患者さんや家族の皆さんには、是非この『統合失調症の薬物治療ガイド―患者さん・ご家族・支援者のために―』を読んでいただけたらいいと思います。また、薬剤師や看護師など、支援者の人達にも読んでいただき、患者さんに情報提供をし、医師との間を繋いでいただくことによって、今後の精神科医療がより良くなっていくと思います。