複数の精神疾患に共通する大脳白質の異常を発見 ~統合失調症と双極性障害に共通の異常~

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概要

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市、理事長:水澤英洋)精神保健研究所(所長:金 吉晴)精神疾患病態研究部の橋本亮太部長、東京大学医学部附属病院精神神経科の越山太輔医師(留学中)、同科の笠井清登教授(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)らの研究グループは、 認知ゲノム共同研究機構 (COCORO) によるオールジャパンでの多施設共同研究体制のもと、日本全国の12の研究機関から統合失調症 696名、双極性障害 211名、自閉症スペクトラム障害126名、大うつ病性障害398名、健常者1506名の計2937名の被験者データを収集し、大脳白質微小構造についての大規模解析を行いました。
それにより、健常者に比べ、統合失調症、双極性障害、自閉症スペクトラム障害では脳梁に共通した異常が見られ、特に統合失調症と双極性障害では、脳弓や帯状束のような大脳辺縁系に共通した異常が見られました。一方で、健常者と比べた場合に統合失調症にのみ、鉤状束のような大脳新皮質同士をつなぐ大脳白質領域に微小構造異常が見られました。しかしながら健常者と比べた場合に大うつ病性障害では大脳白質領域に微小構造異常はまったく見られませんでした。疾患同士での直接比較では、統合失調症と双極性障害との間に大脳白質領域の微小構造の違いは見られなかった一方で、統合失調症および双極性障害と大うつ病性障害との間には大脳辺縁系領域に違いが見られ、これらは統合失調症および双極性障害と健常者との間の違いと同じようなパターンが見られました。
以上の結果から、 統合失調症と双極性障害は似通った病態生理学的特徴をもち、大うつ病性障害はより健常者に近い生物学的特徴を有しているかもしれないことが本研究で新たに明らかにされました。本研究結果は、精神疾患に共通もしくは特有の病態生理学的異常に関する様々な領域での臨床研究・動物研究を今後発展させる契機となることが見込まれます。それにより、これまでの症候学的な精神疾患の診断基準に、生物学的なバイオマーカーが加味されることが予想され、より適切で客観的な診断体系が確立され、効果的な治療法の開発の礎となることが期待されます。 

本研究成果は、日本時間2019年11月29日(金)午前10時に「Molecular Psychiatry」オンライン版に掲載されます。

リリース日

2019年11月20日

掲載誌

Molecular Psychiatry

新聞報道

  • 読売新聞オンライン「そううつ病と統合失調症「共通する特徴」‥‥患者の脳内に発見」
    (2019年11月29日)
  • CB news「複数の精神疾患に共通の大脳白質異常を発見 NCNP精神保健研究所の橋本部長ら」
    (2019年12月2日)
  • 科学新聞「精神疾患の客観的診断に道 統合失調症 双極性障害 大規模解析 大脳白質に共通の異常発見」
    (2019年12月6日 4面)

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