治療抵抗型統合失調症の治療薬の作用機序の一端を発見
―治療反応性を予測するバイオマーカーの開発に期待―

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概要

大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授、同大学院歯学研究科の中澤敬信准教授、慶應義塾大学医学部の岡野栄之教授のグループは、治療抵抗性統合失調症のクロザピン反応性が異なる一卵性双生児患者の不死化リンパ球からiPS細胞由来分化神経細胞を作製し、クロザピン反応性の分子基盤として、細胞接着系分子群の患者間における発現量の相違を新たに発見しました。

治療抵抗性統合失調症に唯一有効な抗精神病薬であるクロザピンの有効性のメカニズムが不明であるとともに、副作用の問題もあり、クロザピンが十分に普及していない現状において、最先端の技術を用いてiPS細胞由来の治療抵抗性統合失調症患者神経細胞を作製し、クロザピン反応性の分子メカニズムの一端を見いだしたことは、精神医学領域や基礎医学/薬学領域において注目される成果です。

今後、今回発見した細胞接着系遺伝子群の発現量の相違が、クロザピン治療反応性の分子メカニズムの包括的解明の糸口となる可能性のみならず、クロザピンに対する反応性を予測するマーカーとなる可能性が考えられます。また、治療抵抗性統合失調症に対する有効かつ副作用の少ない新たな治療薬の開発が期待されるだけでなく、あらかじめ患者由来の神経細胞により治療反応性を予測でき、客観的診断法としても役立つことが期待されます。

なお、本研究成果は、国際的な学術専門雑誌「Schizophrenia Research」の電子版に11月4日(金)午前5時(米国東部標準時)に掲載予定です。

リリース日

2016年10月27日

掲載紙

Schizophrenia Research(電子版)

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