治療抵抗性統合失調症の診断により治療抵抗性統合失調症薬クロザピンの処方率が向上
~ 精神科医への教育がよりよい医療の実践に大きく前進 ~

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概要

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所精神疾患病態研究部の橋本亮太部長、獨協医科大学医学部精神神経科学の古郡規雄准教授らの研究グループは、精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDE プロジェクト)によるオールジャパンでの多施設共同研究体制のもと、218 名の精神科医が受講したクロザピン治療を行う体制がある 49 病院1852 名の患者の退院時処方調査を行い、病院毎の治療抵抗性統合失調症の診断の検討についての退院サマリーへの記載率(治療抵抗性統合失調症診断検討記載率)とクロザピンの処方率とその相関について検討しました。治療抵抗性統合失調症診断 検討記載率は全体では36.5%でしたが、その病院ごとの分布は 0~100%にばらついていました。約 4 割の病院が0%、約 3 割の病院が 100%であり、残りの病院は一部の患者に対して治療抵抗性統合失調症の診断検討の記載を行っていました。また、クロザピンの処方率については全体では 6.2%でしたが、病院ごとのばらつきが大きく、0~43%となっていました。クロザピン処方率と治療抵抗性統合失調症診断検討記載率の両者には強い正の相関が認められ(rs=0.53)、治療抵抗性統合失調症診断検討記載率が 100%の病院では 0%の病院と比較して、クロザピン処方率が有意に高い結果を得ました。治療抵抗性統合失調症診断をしていないということは、患者が治療抵抗性統合失調症であるかどうかについて、十分な検討がなされていない可能性があります。クロザピン治療の前段階の問題として、本邦では治療抵抗性統合失調症の診断検討率にばらつきがあり、治療抵抗性統合失調症と診断していない施設が多いため、治療抵抗性統合失調症の診断・管理に関する治療ガイドラインがあるにもかかわらず、クロザピンの処方率が低くなっていると考えられました。これらの結果から、治療抵抗性統合失調症診断率を高めることが、クロザピン処方率を高めることに寄与する可能性が示唆されました。

本研究成果は、日本時間 2021 年 12 月 3 日午後1時に「Neuropsychopharmacology Reports」オンライン版に掲載されます。

リリース日

2021年12月3日

掲載誌

Neuropsychopharmacology Reports

新聞報道

  • 夕刊フジ 「統合失調症の最終選択薬クロザピンの普及促進」
    (2021年12月21日 9頁掲載)

ウェブ報道

  • Medical Tribune 「クロザピン処方率が高い施設の特徴とは? 治療抵抗性統合失調症の検討率が影響」
    (2021年12月10日)
  • zakzak by 夕刊フジ 「統合失調症の最終選択薬『クロザピン』の普及促進 処方率が諸外国の10分の1未満…低いワケとは」
     (2021年12月21日)