統合失調症の認知社会機能の簡便な測定法とは?
プレスリリース:統合失調症の認知社会機能の簡便な測定法を開発しました。
簡便に認知機能障害を算出できるエクセルシートを作成しています。使用を希望する方は、下記「使用申込みフォーム」よりお申し込みください。
統合失調症の治療において、その社会適応を考えていく際に、患者の現在の認知機能及び認知機能障害(病前の認知機能からの低下の程度)を知る必要があります。しかし、統合失調症の現在の認知機能は測定できますが、病前の認知機能をあらかじめ測定することはないためその情報が得られませんでした。そこで、本人の学歴や成績などの情報を、個々の精神科医がその地域の学校などの情報に精通した上で、時間をかけて問診することによって推定してきました。我々は、簡便に誰でも統合失調症の認知機能及び認知機能障害を測定するために、知能をWAIS-IVの簡略版(類似と記号探し)で測定し、病前推定知能をJART-25で測定し、その差を認知機能障害と定義して、統合失調症患者の認知機能及び認知機能障害を一元的に定量する方法を開発しました。
この方法を用いることにより、簡便に誰でも統合失調症患者の認知機能及び認知機能障害を測定し、治療に役立てることができます。例えば、日本神経精神薬理学会の統合失調症薬物治療ガイドラインにおいても、「統合失調症の認知機能障害に対して推奨される薬物療法はあるか?」という臨床疑問の項目がありますが、一人一人の患者において、認知機能障害の有無と程度を測定することにより、ガイドラインにおいて推奨する治療を行うことができるようになります。
認知機能障害=現在の知能(WAIS-IV簡略版:類似と記号探し)-病前推定知能(JART-25)
WAIS-IIIの簡略版は、WAIS-IIIと高い相関が認められ、しかも、日常生活技能や社会機能とも中程度の相関が認められる指標であることが示されています。WAIS-IVにおいても同様に簡略版を用いて推定IQを測定できることが確認されています。(Sumiyoshi C, et al, Psychiatry Research, 245:371-378, 2016)
認知機能障害は、全国11の施設の446名の統合失調症患者のデータを分析し、その分布を以下のように定義しています(Fujino et al, Psychiatry Clin. Neurosci.,71(5):294-300, 2017)。「なし」30%程度、「境界」15%程度、「軽度」15%程度、「中等度」25%程度、「重度」15%程度
統合失調症の社会活動の評価を、住吉らが翻訳したSocial Adaptation Scale (SAS)を改変して、労働時間にて示す方法を開発しています。
講習日程 過去の講習日程はこちら
- 令和6年4月13日(土)13:40-16:50
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第3会場(大塚講堂 2F 小ホール)
「短時間でできる認知機能測定の実際」
2024年4月13-14日に開催される第18回日本統合失調症学会にて、
認知社会機能障害の簡易な測定法に関する研修を行います。