うつ病入院患者に対する電気けいれん療法後の維持薬物療法:198種類の処方実態
概要
電気けいれん療法(ECT)は、抗うつ薬で十分な改善が得られない重度うつ病や精神症性の特徴を伴ううつ病等に対して有効性の高い治療法ですが、治療後の維持薬物療法については本邦における診療ガイドライン上の推奨が明確でなく、実臨床における処方実態も十分に調査されていませんでした。
本研究では、EGUIDEプロジェクトに参加した全国240施設のうつ病入院患者3,749名を対象に、退院時の処方内容を調査しました。ECTを受けた群521名と受けていない群3,273名を比較したところ、前者では後者よりも抗うつ薬と非定型抗精神病薬を併用する処方が多くみられました(Table 1)。詳細な解析では、ECTを受けた群の退院時処方として、抗うつ薬を含む198種類もの組み合わせが確認されました。その中において、ECTを受けた群では受けていない群よりも抗うつ薬と炭酸リチウムの併用療法やノルトリプチリンの単剤療法が統計学的に有意に多く用いられていました。
これらの結果は、ECT後の維持薬物療法として抗うつ薬の単剤療法のみならず、抗うつ薬と非定型抗精神病薬や炭酸リチウムとの併用療法など多様な処方選択がなされている実態を示唆しています。今後は、こうした実臨床の処方傾向を検証する前向き研究の実施と結果のガイドラインやその講習内容への反映が求められます。
<今回の結果を踏まえ、精神科医師の皆様に以下を提案します>
- うつ病患者のECT後の維持薬物療法は多様である可能性があり、本プロジェクトの過去の報告から抗不安薬や睡眠薬、抗コリン薬などの処方最小化に努めましょう。
- その上で、ECT後のうつ病維持薬物療法は診療ガイドラインで提案される原則を踏まえ、重症度や特定用語の有無、再発リスク、合併症などの個々の状況を勘案し共同意思決定に基づいた薬物療法を検討しましょう。
この内容は「BMC Psychiatry」に掲載されました。 原文はこちら
