ガイドライン一致率
ガイドライン一致率を使ってみよう!
- 「ガイドライン一致率」ってどんなもの?
- ガイドライン一致率を評価するための計算表 (IFS)
- 統合失調症版 IFS
-
うつ病版 IFS
軽症うつ病
中等症/重症うつ病
精神病性うつ病
- 計算例
*IFS ; Individual fitness score、 mECT; 修正型電気けいれん療法、 CBT; 認知行動療法
「ガイドライン一致率」ってどんなもの?
「ガイドライン一致率」は、精神科医療の質を評価する新しい指標です。主に統合失調症とうつ病の治療において、医師が行っている治療がどれだけガイドラインに適合しているかを0から100%の間で評価します。100%が完全にガイドラインに準拠した治療を意味します。 「ガイドライン一致率」の計算についてですが、まずガイドラインに適合しているかどうかを評価する計算表を用います。計算表から算出された値が「Individual fitness score(IFS)」となります。「IFS」の最大値である100に対しての「IFS」の割合が「ガイドライン一致率」となります。計算表は統合失調症版とうつ病版があり、それぞれが治療抵抗性や重症度により細かく分類されています。採点は減点法で行われます。例えば適切な抗精神病薬、抗うつ薬の選択がなされていれば減点されませんが、不必要な多剤併用などでは減点されます。
「ガイドライン一致率」の最大の特徴は、患者さんの治療内容が治療ガイドラインに適合しているかを個別に評価できる点です。実際の医療現場で精神科医師が自身の治療内容を客観的に確認し、患者さんと共有することができます。これにより、医師と患者さんが相談しながら治療内容を改善する「共同意思決定」をスムースに行う最適なツールになることを目指しています。 「ガイドライン一致率」の導入により、複数の効果が期待できます。まず、治療の質が向上します。医師がより意識的に治療ガイドラインを参照するようになり、患者さんも良質な治療とは何かを意識することで、積極的な治療への参加が促され、結果的にエビデンスに基づいた良質な治療が実践されます。さらに、「ガイドライン一致率」を病院単位で導入・展開することで、医療機関全体の治療の標準化・均てん化が期待できます。
しかし「ガイドライン一致率」にはいくつかの注意点もあります。最も重要なのは、「ガイドライン一致率」はあくまで参考値であり、絶対的な基準ではないということです。実臨床では併存症の存在など患者さんが置かれた状況は異なり、ガイドラインから外れた治療が最適な場合も存在します。また、「ガイドライン一致率」は薬物療法を中心に評価するため、心理社会的療法などの非薬物療法の重要性が十分に反映されない可能性があります。
「ガイドライン一致率」は精神科医療の質の向上を目指す新しい指標です。標準的な治療を広めることで、より多くの患者さんに適切な治療を提供することが可能となります。一方で個々の患者さんの特性や希望を尊重しながら、柔軟に活用していくことが重要です。
ガイドライン一致率を評価するための計算表 (IFS)
IFS=100を最大とし、治療の内容に応じて減少値を判断します。複数の治療内容が併用されている場合は、減少値を重ねます。減少値の合計が-100を超えた場合は、一律IFS=0とします。
- IFSは統合失調症薬物治療ガイドライン2022・日本うつ病学会うつ病治療ガイドラインの内容を理解したうえで使用してください。
- 治療内容を具体的な内容に書き換えた「基本の計算表」が、統合失調症とうつ病にそれぞれあります。計算表を使用するにあたり、まず診断をする必要があります。
- 統合失調症の場合は、治療抵抗性か、非治療抵抗性(=治療抵抗性ではない)かを診断します。治療抵抗性であればクロザピンの処方があるかどうかを確認します。
- うつ病の場合は、軽症、中等症・重症、精神病性のいずれかを診断します。
- もし、修正型電気けいれん療法(mECT)による治療や、うつ病における認知行動療法(CBT)による治療をIFSに考慮したい場合は、オプションとして「mECTを実施している場合の計算表」、「CBTを実施している場合の計算表」を使用することもできます。
統合失調症版 IFS
統合失調症薬物治療ガイドライン2022では “非治療抵抗性統合失調症” と”治療抵抗性統合失調症”で推奨治療が異なるため、それぞれの採点表を作成しました。
基本の計算表
mECT実施時の計算表
うつ病版 IFS
日本うつ病学会うつ病治療ガイドラインでは “軽症うつ病” ”中等症/重症うつ病” “精神病性うつ病” で推奨治療が異なるため、それぞれの採点表を作成しました。