統合失調症及びうつ病患者における頓用薬を含めた退院時処方の特徴

概要

 統合失調症薬物治療ガイドライン及びうつ病治療ガイドラインのいずれにおいても頓用薬の処方は推奨されていません。本研究では主剤の単剤治療率及び他の向精神薬の非処方率を評価指標(Quality Indicator; QI)として用いており、これは数値が高いほど評価が良いことを表します。定時処方のみのQIと頓用薬を含めたQIを算出しました(表1)。統合失調症の抗精神病薬単剤率は定時処方のみだと56.2%、頓用薬を含めると50.7%で、うつ病の抗不安薬睡眠薬無し率は定時処方のみだと24.6%、頓用薬を含めると21.3%となっています。このように頓用薬を含めてQIを算出するとQIは低下することがわかりました。頓用薬を含めることによるQIの低下の割合(QI比)を薬剤カテゴリーごとにみてみると、例えば統合失調症では抗不安薬睡眠薬無し率のQI比は0.858に対し、抗うつ薬無し率のQI比は0.999と、頓用薬を含めることによるQIの低下の割合は薬剤カテゴリーによって異なることがわかりました。

 薬剤カテゴリーごとに定時処方のQIとQI比の関連を見てみると、統合失調症、うつ病ともに定時処方のQIが高い薬剤カテゴリー程QI比も高くなります。この結果は定時処方の単剤治療率や他の向精神薬の非処方率が高いほど、頓用薬の処方が少ないことを示しています。単剤治療を推進することで頓用薬の低減に繋がり、頓用薬の低減を進めることが単剤治療に繋がることが示唆されます。

<今回の結果を踏まえ、精神科医師のみなさまに以下の実践を提案します>

  • 頓用薬が出ている患者さんの使用状況をまず知りましょう。
  • カンファレンスなどの機会を通じて多職種で頓用薬の使用状況を確認しましょう。
  • 頓用薬による多剤化や漫然使用に気付いたら主剤の内容も含めて治療内容を見直しましょう。
表 定時処方のQI値及び頓用薬を含めたQI値

この内容は「Annals of General Psychiatry Volume 21(1)」に掲載されました。 原文はこちら


Copyright c 2018 Department of Pathology of Mental Diseases All Rights Reserved.