電気けいれん療法が抗不安薬および睡眠薬の使用に及ぼす影響:傾向スコアマッチング分析
概要
うつ病治療ガイドライン及び統合失調症薬物治療ガイドラインでは、抗不安薬や睡眠薬の長期使用は推奨されていません。一方で、その依存性のために減量・中止にしばしば難渋します。本研究では、うつ病および統合失調症患者において、電気けいれん療法(ECT)と抗不安薬・睡眠薬の使用との関連について検討しました。具体的には、両患者について入院中にECTを受けた患者(ECT群)と受けていない患者(非ECT群)に分類し、傾向スコアマッチング分析を用いて比較検討しました。結果は、うつ病では退院時の抗不安薬・睡眠薬の使用率がECT群では非ECT群よりも有意に低かったのに対し、統合失調症でもECT群でより低い傾向はみられたものの2群間で統計学的な有意差はみられませんでした。ただし,統合失調症でもECT群では,退院時の抗不安薬・睡眠薬の使用率は入院前と比較して有意に低いという結果になりました。
一方で、そもそもベンゾジアゼピン受容体作動薬はけいれん閾値を上げるためECTを行う際には減量や中止を行うことが推奨されていますが、かなり高い割合にて継続して出されている可能性があることもわかりました。
<今回の結果を踏まえ、精神科医師のみなさまに以下の実践を提案します>- うつ病・統合失調症の入院患者においてECTが適応となる場合、入院前に処方されていた抗不安薬・睡眠薬が退院までに減量できないか検討しましょう。
- 特にうつ病の入院患者でECTを施行する場合には、入院中に抗不安薬や睡眠薬の減量を積極的に行えるかもしれません。
この内容は「Psychiatry and Clinical Neurosciences Volume77, Issue1」に掲載されました。 原文はこちら