精神科入院患者に対する向精神薬頓用処方モニタリングプログラムが処方に与える影響

概要

 統合失調症薬物治療ガイドライン及びうつ病治療ガイドラインのいずれにおいても頓用薬の処方は推奨されていません。北里大学病院では精神科入院患者を対象に頓用処方の適正化を目的に2022年7月から週に1回、医師、薬剤師、看護師など多職種による頓用処方モニタリングプログラムを実施しています。モニタリングプログラムでは頓用薬の多剤化や漫然処方が行われている患者さんを抽出し、その解決策を多職種で議論し、その後の頓用薬の処方状況の変化の確認を行っています。
 本研究では2021年7月から2023年6月の期間に北里大学病院精神科に入院した全ての精神疾患の患者389例を対象とし、モニタリング実施群とモニタリング非実施群の処方を比較検討しました。モニタリングプログラム開始以前の2021年7月から2022年6月までに入院した患者をモニタリング非実施群とし、モニタリング開始以降の2022年7月から2023年6月までに入院した患者をモニタリング実施群としました。その結果、入院中に頓用薬の処方があった患者の割合はモニタリング非実施群の64.5%に対しモニタリング実施群では29.8%と有意に減少しました。さらに、退院時の向精神薬頓用処方率はモニタリング非実施群で28.1%に対しモニタリング実施群で9.3%と有意に減少しました。また、定時処方の向精神薬の薬剤数はモニタリング非実施群では入院前後で変化がありませんでしたが、モニタリング実施群では入院前の2.47±1.90剤から退院時には1.87±1.24剤へと有意な減少が認められました(表)。これらの結果から、頓用モニタリングによる頓用処方適正化は頓用薬の処方を減らすとともに定時処方の多剤処方の解消にもつながる可能性があります。

<今回の結果を踏まえ、精神科医師のみなさまに以下の実践を提案します>

  • カンファレンスなどの機会を通じて多職種で頓用薬の使用状況を確認しましょう。
  • 頓用薬の整理の方法について多職種で検討しましょう。
  • 頓用薬の多剤化や漫然処方があった場合には定時処方の内容の見直しも行いましょう。
図

この内容は「BMC Psychiatry」に掲載されました。 原文はこちら


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