統合失調症における持効性注射剤抗精神病薬と経口抗精神病薬の併用治療の実態:多施設共同研究の結果

概要

統合失調症の薬物療法において、長時間作用型注射抗精神病薬(LAI)は再発防止に有効であることが知られています。しかし、LAIの使用頻度や他の向精神薬の併用について、詳細な状況は日本では分かっていません。今回、LAI群(内服薬の有無に関わらず、少なくとも1剤のLAIが使用されているケース)、非LAI群(治療においてLAIが使用されていないケース)に分けて、併用されている向精神薬の実態を調査しました。結果は以下の通りです。

  • 統合失調症2518名(LAI群263名、非LAI群2255名)の処方を調べることができました。即ち、LAIの使用頻度は10.4%でした。
  • LAI群では、非LAI群に比べ、抗精神病薬の併用が有意に多く、投与量も有意に多いということが分かりました。
  • 他の向精神薬について、LAI群では、非LAI群に比べ、抗不安薬/睡眠薬の併用が有意に少ないという結果が得られました。
<今回の結果をふまえ、精神科医師の方々に以下の点を提案します>
  • 今回の調査では、LAIの使用率は10.4%であり、諸外国の使用率に比べ低い可能性があります。当事者から要望がある場合やアドヒアランス不良による問題がある場合には、LAI使用を検討するとよいでしょう。
  • LAIに加え抗精神病薬を併用している場合には、その必要性を再検討するとよいと思われます。
  • 内服薬のみのケースでは、抗不安薬/睡眠薬が処方されやすいことに留意しましょう。
表

この内容は「Journal of Clinical Psychopharmacology 43」に掲載されました。
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