入院中の統合失調症患者における第二世代抗精神病薬単剤投与は抗コリン薬投与中止に寄与する

概要

統合失調症薬物治療ガイドラインでは、抗コリン薬の長期使用は推奨されていません。諸外国でも研究ごとにばらつきがありますが、欧米の研究では約2割程度に抗コリン薬が処方されています。アジア圏ではそれに比較すると抗コリン薬の処方率が高く、最近の我々の調査では、わが国の約3割の患者さんに抗コリン薬が処方されています(Hori H et al., Front Psychiatry 2022)。抗コリン薬は、口渇、便秘、認知機能障害を引き起こすため適切な使用が求められます。本研究では、入院直前時に抗コリン薬が処方されていた統合失調症患者のうち、退院時に抗コリン薬を中止していた患者の特徴について検討しました。その結果、抗コリン薬中止群は継続群と比較して、退院時の抗精神病薬単剤治療が有意に多く、第二世代抗精神病薬(SGA)を処方されていた患者割合も有意に多いことが明らかとなりました(図1)。さらに抗コリン薬中止群は、持効性注射剤の使用率が高く、ベンゾジアゼピン系薬剤の併用率が低いことが明らかとなりました(図1)。

<今回の結果を踏まえ、精神科医師のみなさまに以下の実践を提案します>
  • 入院直前時に抗コリン薬が処方されている場合には処方の必要性を検討し、可能であれば抗コリン薬を中止しましょう。
  • 抗精神病薬単剤治療および第二世代抗精神病薬の使用を心がけましょう。
図1

この内容は「Journal of Clinical Psychopharmacology Volume42, Issue6」に掲載されました。 原文はこちら


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