クロザピン処方体制や治療抵抗性統合失調症に関する診断の有無と抗精神病薬単剤療法率との関連
概要
統合失調症薬物治療ガイドラインでは、統合失調症患者に対し抗精神病薬の単剤治療が推奨され、一方で、抗精神病薬以外の向精神薬の併用も推奨されません。
本研究では、医療施設にクロザピン(CLZ)を処方可能な体制があるかどうかが、統合失調症入院患者の治療にどのように関連するか退院時処方を解析しました。CLZ体制がある群は、体制がない群と比較し、抗精神病薬単剤療法率、ほかの向精神薬の併用も一切ない完全抗精神病薬単剤療法率、ともに有意に高い結果となりました。
さらに、この2群を退院時に、治療抵抗性統合失調症(TRS)かそうでないかの診断を記載しているか、それらの診断の記載自体をしていないかの4群にわけましたところ、CLZの処方体制がありTRSの診断の有無を記載していた群のみが、他の3群より有意に単剤療法率が高く、その他の3群間では有意差は認められませんでした。このことから各機関がCLZの処方体制を整え、退院時にTRSの診断の有無を行い記載することが、ガイドラインに推奨される単剤治療の増加と関連することが示唆されました。
図:クロザピン体制の有無による2群またはクロザピン体制の有無と治療抵抗性かどうかの診断記載の有無による4群における抗精神病薬単剤療法率および完全抗精神病薬単剤療法率

略語; CLZ: クロザピン; CLZ(+)Diag(+): CLZ体制あり+治療抵抗性の有無の記載あり; CLZ(+)Diag(-): CLZ体制あり+治療抵抗性の有無の記載なし; CLZ(-)Diag(+): CLZ体制なし+治療抵抗性の有無の記載あり; CLZ(-)Diag(-): CLZ体制なし+治療抵抗性の有無の記載なし
<今回の結果を踏まえ、精神科医師の皆様に以下を提案します>
- CLZの処方体制がない施設は、処方体制を構築するか、処方体制がある施設との病病連携を促進することで同様の治療ができることを目指すことをお勧めします。
- 統合失調症患者の退院時には、治療抵抗性に当てはまるか当てはまらないかの診断を行い、退院サマリに記載しておくことをお勧めします。
この内容は「International Journal of Neuropsychopharmacology」に掲載されました。 原文はこちら