退院時クロザピン処方の有無における抗精神病薬単剤療法率および向精神薬併用率の解析

概要

統合失調症薬物治療ガイドラインでは,クロザピン(CLZ)は,治療抵抗性統合失調症(TRS)の治療に推奨されています.以前,私たちはCLZ治療の前段階の問題として、本邦では治療抵抗性統合失調症と診断していない施設が多いため、CLZの処方率が低くなっている可能性を報告いたしました(Yasui-Furukori et al. Neuropsychopharmacol Rep. 2022 ;42(1):3-9.)。

今回の研究では退院時サマリの診断から退院時にCLZが処方されていたTRS(赤),CLZが処方されていなかったTRS(緑),およびCLZが処方されていなかったTRSの記載がない患者(ND-TRS,黄)の退院時処方の違いを検討した結果、CLZが処方されていたTRSの群は他の2群より抗精神病薬単剤療法率が高かったこと,さらに他の向精神薬の併用もない抗精神病薬完全単剤療法率も高かったことがわかりました(図1)。

<今回の結果を踏まえ、精神科医師の皆様に以下を提案します>

  • クロザピンを服用している患者は向精神薬の併用が少なく、よりガイドラインに適した治療になっていることがわかりました。これを踏まえて、多剤併用療法の統合失調症患者さんの再診断及び,治療抵抗性統合失調症の可能性をカンファレンスなどで検討しましょう。
  • 治療抵抗性統合失調症と考えられる場合,クロザピンの処方を検討しましょう。
  • 退院サマリに治療抵抗性統合失調症の診断の有無,および治療抵抗性統合失調症の検討を行ったかの有無(行った場合はその内容も)を記載しておくことをお勧めします。

図1

この内容は「International Journal of Neuropsychopharmacology Volume 25, Issue 10」に掲載されました。 原文はこちら


Copyright c 2018 Department of Pathology of Mental Diseases All Rights Reserved.